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アジアン・カープとの攻防戦 - ミシガン湖にて

5月5日は「子供の日」、そして鯉のぼりの日ですけど、流石にこれはアメリカでは見れません。

アジアン・カープとの攻防戦 - ミシガン湖にて_b0188828_11194516.jpg鯉のぼりには、人生という流れの中で遭遇する難関を鯉のように突破して立身出世して欲しい、という願いが込められており、古代中国の故事に由来します。

中国の黄河上流に竜門という激流が連なる滝があり、そこを登り切った魚は霊力が宿って龍になるといわれていました。その滝を登るほどの勢いのある淡水魚は、清流のみならず池や沼地などでも生息できる生命力の強い鯉をおいてほかにありません。ある時、一匹の鯉が激しい滝水に逆らいながら竜門を登りきったところ、鯉は龍へと変身し天に昇っていきました。

参照:allabout【こどもの日】の特集


日本の鯉のぼりはのんびりとゆったりと大空を泳いでいすけど、メキシコ湾からカナダ国境近くの五大湖に向かってミシシッピー川を北上するPredetatorたる「アジアン・カープ」はちょっと一味違います。はて近況?はどうなったのだろうと調べてみました。

アジアンカープとは日本ではハクレンと呼ばれる淡水魚。このハクレンは1970年代にミシシッピー沿岸のナマズ養殖業者が養殖池内にいる天敵のザリガニを駆除したり、池から藻その他の懸濁物質を取り除くために中国から持ちこみました。環境保護庁は下水処理場の池を清掃するのにこの魚を利用するプログラムも進めました。でも1992年のハリケーン「アンドリュー」の大洪水でアジアン・カープが養殖池からミシシッピー川に逃げ込んでしまい、それから10年もしないうちに、アジアンカープはミシシッピー川の最大勢力になりました。


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一日に自分の体重の4割ものえさ(プランクトン)を食べる大食漢で、大きいものは18キロにも達します。飛び上がる能力が高く、ボートなどが近くを通ると興奮して水面から3メーターの高さに達し、人に当たったりして死亡事故も発生してます。一方でそれを逆手に取って、弓矢で射つというスポーツにしている人もいます。年に3回も子供を産み、天敵がいないので、もの凄い勢いで繁殖しているのが現状です。

五大湖とミシシッピー川は、ミシガン湖畔のシカゴから水路で繋がっているので、五大湖に到達するのは時間の問題と考えられていました。そしてこのハクレンのミシガン湖へ流入を水際で防いできたのがイリノイ州。イリノイ州はシカゴ近郊の河川に電気を流すシステムを築き侵入を止めてきましたが、それも効かなくなった昨年、周囲と環境保護団体の反対の中で川の一部を完全に堰き止め、その中に毒を流して殲滅を図りました。問題は、一度五大湖に入ってしまうと繁殖を止める術が無いので、大繁殖を起こし、従来種の鮭やパーチ(すずきの淡水魚)等を食い荒らす事が考えられています。$7B(約6300億円)ある五大湖の漁業が壊滅すると予想されてます。でも、既にはいってしまっているのではという意見もあります。


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ハクレンは中国では食材として好まれ、「砂鍋魚頭」などの料理は絶品

このハクレンの駆除にかかった経費はイリノイだけでこれまでに200億円。そして昨年米国政府はミシガン湖の水産資源が州の重要ビジネスになっているウイスコンシンとミシガン州の意向を受け、ハクレンのミシガン湖への流入防止作戦を国家プロジェクトに格上げしました。それまでイリノイ州や地元の漁師はこのハクレンの使い道を探ったものの、骨が多すぎ米国人の食用にはならずこれまで農業用肥料にしてました。ところが、この厄介者を中国が目を付け、米国からの新たな輸入品目として正式に認可しました。

アメリカを食べつくそうとしていたアジアン.カープも机以外の4本足のものなら何でも食べるといわれる中国人の巨大な胃袋に納められる結膜となりました。
by nhajime3 | 2011-05-05 08:20 | 社会情勢
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