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将棋ソフト(A.I.)と人間の共存

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YouTubeで第二回叡王戦の予選対決「森内俊之九段vs阿部光瑠五段」の対決をニコニコ生放送で解説してました。ニコニコ生放送といえば、人間対コンピューター棋戦発祥の番組、将棋電王戦や新しい棋戦、叡王戦で有名になりました。


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興味深かったのは、普通ならプロ棋士の解説者は、今までの自分の経験や直感で解説するのですが、流石、ニコニコですね、人間対コンピューター棋戦で使用される将棋ソフト「Ponanza」を利用して、次の最善手、数字による形勢判断をしてました。この将棋ソフトは現在最強と言われるソフトで、今年の10月に行われた「第4回将棋電王トーナメント」将棋電王トーナメント(コンピューター将棋ソフトトーナメント大会)で大方の予想通り、Ponanzaが連覇しました。


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この現在の場面での形勢は、阿部光瑠五段が少し優勢で、コンピューター将棋では要素を関数の形にして数値化した「評価関数」で形勢を判断しています。(+)ならば優勢、(-)ならば劣勢。数値が大きいほど、優勢、勝勢、必勝などの形勢になります。

コンピューター将棋の形勢判断の材料は次の4つです。

「駒の損得」●●● 7種類の駒(飛角金銀桂香歩)の価値
「駒の働き」●●● 駒の働き具合い。プロ棋士はこれを一番重要視します。
「玉の堅さ」●●● 玉の安全度。
「手番」  ●●● 玉を捕まえるまでのスピード


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解説は田中寅彦九段。
アシスタントは山田久美女流四段。
局面は後手番の阿部光瑠五段が、△8七銀と歩の頭に銀を打ち込んだところ。
田中寅彦九段もタブレットにインストールされた将棋ソフトに、初めはどうやって使うんだと当惑してましたが、そのうちに慣れてきて、これは便利だと感嘆してました。


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この場面での将棋ソフト「Ponanza」の次の一手(全ての手を探索した中でのベストな一手)は、
▲6五銀と桂馬を取る手でした。そうすれば、今は形勢が少し悪いながらも頑張れる形になって、形勢が幾分上向いていく予想だったのですが…!


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森内俊之九段が持ち時間を使い果たして、一分将棋(一分以内に手を指さないと反則負け)に追われて、読み切れずに指した▲6六角が一挙に敗勢を招く悪手でした。


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この結果、評価値が一挙に悪くなって、この幾手も指さず先手番、森内俊之九段の負けとなりました。


将棋のプロとはいえ、人間歳を取ると、判断力、瞬発力、決断力、持続力、もちろん体力も衰えてミスをしやすくなる。最後は持ち時間を使い果たして、一分間の秒読みでは読み切れず悪手を指して、形勢が一挙に悪い方に傾く。それに反して、コンピューターは時間と共に、年々、性能が向上し、一秒間で読める手数が多くなる。差し手は正確無比で、人間と違って間違えることもない。故に、一旦形勢が悪くなったら、人間側はほぼ挽回不能。頭脳を振り絞って戦う人間のように、頭が疲れることもないから、休憩時間もいらない。お腹が減ったからといって、おやつや食事を取ったりする必要もない。もちろん、トイレにはいかない。全く完全無比の鉄人を盤面で相手にするようで、人間側が感じるストレスが半端ではないです。


今までは将棋というと人間対人間が一般的な構図だったけど、そこに初めてBonanzaという将棋ソフトが渡辺竜王に戦いを挑んできた。それが2007年です。その局面は、YouTubeの運命の一手 渡辺竜王vs人工知能Bonanza (2009年)に載っています。



当時の雰囲気としては、”プロにコンピューターのソフトがどこまで通用するのか”、”人類の偉大さをコンピューターが教わる日だ”と誰しも楽観していたけど、実際はコンピューター有利のまま終盤を迎え、コンピューターがたった一手緩い手を指して、勝利は人間側に転がり込んだという転換でした。人間がコンピューターがーに圧倒するというより、人間側が勝ちを拾ったという展開でした。その当時でも強かったコンピュータソフトは、PC技術的進歩や学習能力の積み重ねで、驚異的に強くなってきました。


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コンピューター将棋ソフト側の手を指す、デンソーの将棋指しロボット「電王手くん」
(写真提供元:http://mag.sendenkaigi.com/kouhou/201507/craftsmanship-pr/005460.php)

それ以降、コンピューター対人間との対戦がニコニコ生放送で、将棋電王戦として3回開かれ、それぞれの選抜組との結果はコンピューターの圧倒。人間側が勝ちを拾うのは稀で、コンピューター側のソフトの不備を突いたりする奇襲戦法で勝つぐらいで、まともに戦ったら全然勝負にならないのが最近の状況です。対コンピューター棋戦は、最近、叡王戦と改名してトーナメント方式で優勝した棋士がコンピューターと対戦するようになりましたが、その結果も棋士側の二連敗という、内容的にも完敗と結果となりました。その第二回叡王戦には今まで出場していなかった人類最強と噂されている羽生三冠も出場され、いよいよ最強人類と最強コンピューターの対戦という叡王戦のクライマックスを迎えつつあります。

今では多くのプロ棋士までも、コンピューター将棋ソフトを自分の棋力アップの便利なツールとして愛用し始めているみたいです。
by nhajime3 | 2016-10-27 02:15 | 環境.科学
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